【コラム】民法改正と法定利率

2020年4月から改正民法が施行されました。今回の改正では、法定利率も大きな改正をしています。

法定利率とは、法律が定める利息で、当事者が利息を定めなかったときに適用されます。改正前、法定利率は5%でしたが、改正民法では3%になりました(民法404条2項)。また、改正前は、商事法定利率は6%(商法514条)と定められていましたが、商事法定利率の規定はなくなり、民法の法定利率に一本化されました。さらに、これまでは、5%で固定されていた利率ですが、今回の改正では、法定利率を3年ごとに変動させる制度とすることになりました(同条3項)。3年後にはまた法定利率が変わるかもしれません。ただし、法定利率の見直しがあっても、利息が生じた最初の時点における法定利率が適用されます(同条1項)。

日常的に扱っている事件の中で、法定利率の変更による影響が大きいと考えられるのは、将来に取得すべき利益が侵害された場合の損害賠償請求の場面だと思います。交通事故の後遺障害による逸失利益の場合を例に改正前後を比較してみます。

例えば、交通事故前の収入が400万円であった人が、後遺障害等級13等級(労働能力喪失率9%)の傷害を負い、今後の労働能力喪失期間が40年だったとします。通常、このような場合は、将来の分も含めて一括で損害賠償を請求するため、将来の利益については利息相当額が控除されてしまいます(逸失利益の計算式は、「収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」)。

今までは、法定利率5%で計算された利息が控除されていたのですが、今後は、控除される利息は3%で計算されますので、取得できる損害賠償請求額は大きくなります。

上記の例の場合ですと、法定利率5%の場合の逸失利益は、617万7240円ですが、法定利率3%で計算すると、832万1400円になります。損害賠償を請求する被害者側にとっては、とても有利な改正です。

(弁護士 南 友美子)