【コラム】相続税と民法

相続税と民法

 

相続税は、所得税や住民税とは違って毎年支払うものではないため、相続税のことを知る機会は意外に少ないのではないでしょうか。しかも、相続税の算定にあたっては、遺産分割の基本的なルールを定めている民法とは異なるルールが定められている部分もあります。今回は、相続税のルールの中で、民法とは異なる扱いがなされる点を2つご紹介します。

①養子の人数の制限

民法では、養子縁組をすることができる人数に制限はありません。遺産分割においても、養子は実子と同様に、全員が法定相続人になります。

しかし、相続税を算定するにあたって法定相続人としてカウントできる養子の人数には制限があり、被相続人に実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までとなります。

養子縁組は、相続税の節税方法としてよく知られています。相続税には、3000万円+600万円×法定相続人の数の基礎控除があります(相続税法15条)。例えば、養子縁組をして養子を1人増やすと、控除額が600万円増えることになります。しかし、この養子の人数の制限があるため、基礎控除額を無限に増やすことはできません。

なお、「養子」と扱われるかどうかについて、若干の例外がありますので、関心のある方は国税庁のホームページもご覧ください。

②生命保険金

民法では、被相続人の死亡のよって取得した生命保険金は、その保険料を被相続人が支払っていた場合であっても、原則として受取人の固有の財産であり、遺産には含まれないと考えられています。

しかし、相続税の算定にあたっては、このような被相続人の死亡によって取得した生命保険金は、みなし相続財産(相続税法3条1項各号)として、相続税の課税対象になります。(ただし、500万円×法定相続人の数までは非課税です。)

 

このように、遺産分割と相続税の算定の場面では、取扱いが異なる点があります。相続税についての基本的な知識を知っておくと、いざというときや、相続税対策に役立つかもしれません。

 

(弁護士 南 友美子)

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