【コラム】労働者の募集・採用における年齢制限について
事業者の皆様にとって,従業員を採用する際の条件について,どんなことを考えるでしょうか。「うちのターゲットの客層は20代なので20代のスタッフを募集したい!」や,「仕事が重労働なので40代以上の方はちょっと・・」といったことを考えたりするかもしれません。しかし労働者の募集・採用に当たり,このような内容の採用条件を設けることは,「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(いわゆる労働施策総合推進法)で禁止されています。以下では,この法律による採用・募集時の年齢制限の規制について,簡単に説明します。
1 年齢不問が原則
労働者の募集・採用においては,原則として年齢を不問としなければなりません(法9条)。
この趣旨は,募集・採用においては個々人の能力や適性を判断することで,1人ひとりにより均等な働く機会が与えられるようにすること,また少子高齢化の中において経済の持続的な成長のためには,個々人が年齢ではなくその能力や適性に応じて活躍の場を得られることが重要である,という考えにあります。
2 例外は6パターン
年齢不問の原則に対し,例外的に年齢制限が認められる場合として,以下のとおり大きく分けて3類型,計6つのパターンに分類されて規定されています(労働施策総合推進法施行規則1条の3)。
① 定年年齢を上限として,その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
(例) 定年65歳の会社が,「65歳未満」の条件で募集するなど。ただし契約期間を定めている場合は不可。
② 法令の規定によってそもそも年齢制限が設けられている場合
(例) 警備業務について18歳以上を条件に募集(警備業法14条でそもそも18歳未満は警備業務に就けない)
③ 年齢制限を必要最小限度のものとする観点から見て合理的な制限である場合として次のいずれかに該当する場合
イ 長期の継続勤務によるキャリア形成を図る観点から,青少年その他特定の年齢を下回る労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
(例) 35歳未満の人を募集(高卒以上・職業経験不問)
→期間の定めがあったり,職務経験を付したりしているような場合には不可。
ロ 技能や知識の承継を図ることを目的として,特定の職種において労働者数が相当程度少ない(他の年齢層と比べて2分の1以下)特定の年齢層(30~49歳)に限定し,期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
(例) ホームヘルパー業務に従事する者として,30~39歳の人を募集(自社において同業務に従事している者が20代は10人,40代は8人いるものの,30代は1人しかいないような場合)
ハ 芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合
(例) 演劇の子役として,10歳以下の人を募集など
ニ 高年齢者(60歳以上)や,就職氷河期世代(35歳以上55歳未満)の不安定就労者・無業者または特定の年齢層の雇用を促進する政策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる人に限定して募集・採用する場合
(例) 35歳以上55歳未満の人を募集(無期雇用・職業経験不問)
※ただしハローワークに同じ求人を出すことが必要。
3 このように,求人の際の年齢制限については,法律によってかなり細かくルールが決められています。もし仮に求人の内容が法令に違反している場合には,厚生労働大臣によって助言,指導,勧告などの措置がとられることがありますので(労働施策総合推進法33条),注意が必要です。
より具体的には,厚生労働省のリーフレットをご参照下さい。
(弁護士 岩田康孝)