従業員が一定数以上の規模の事業主は,従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を法定雇用率以上にする義務があります(障害者雇用促進法43条1項)。

 民間企業の法定雇用率は令和3年3月1日から0.1%引き上げられて2.3%になりました。

 引き上げにともない,対象となる事業主の範囲も拡大され,従業員43.5人以上を雇用している事業主は,障害者を雇用しなければならないことになりました。なお,特例子会社制度や,企業グループ算定制度などの特例制度があります(詳しくはお問い合わせ下さい。)。

 障害者を雇用しなければならない事業主には,毎年,障害者雇用状況報告をハローワークに報告する義務があります(43条7項)。

 事業主は,障害者に不当な差別をしてはなりませんし(34条,35条),障害者からの申し出により障害の特性に配慮した必要な措置(合理的配慮)を講じなければなりません(36条の2~36条の4)。

 合理的配慮の例としては,たとえば,募集・採用の情報を文字だけでなく音声で提供すること,就労する障害者の席を出入りしやすい入り口近くに設定すること,段差や危険箇所にカラーコーンなどを設置して発見しやすくすることなどがあります。

 法的な義務ばかり説明されると,憂鬱な気持ちになってしまう事業主の方もいらっしゃるかもしれません。しかし,発想の転換により,障害者雇用を企業経営の柱として全面的に活用して成長・発展している会社もあります。

 そうした会社のひとつに,日本理化学工業株式会社があります。1937年創業のチョーク製造会社です。85人の従業員のうち63人が知的障害者(2018年現在)で,障害者雇用割合は約7割という高率です。工程にさまざまな工夫(合理的配慮)を行うことで,製造ラインのほぼ100%を知的障害者のみで稼働できるようされています。

 障害者雇用をどのように考えて,どのように活かしたらよいのか,またそのために必要な配慮や対応にはどういったことが必要なのかということについては,弁護士があれこれ述べるよりも,日本理化学工業株式会社の社長である大山泰弘氏が書かれた「「働く幸せ」の道―知的障がい者に導かれて」(WAVE出版)を読んでいただくと何よりもよくわかると思います。Kindle版もありますので,障害者雇用にご関心のある事業主の方にはぜひお読みいただければと存じます。

(弁護士 土佐一仁)