「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」という法律があります。いわゆる「DV防止法」と通称される法律です。

 

裁判所が,DV加害者に対して,被害者などへの接近禁止等を命令するのが「保護命令」です。

 

法律名は「配偶者からの暴力」となっていますが,この法律でいう配偶者は,法的に婚姻している場合だけでなく「事実婚」の場合などを含みます。それだけでなく,平成26年以降は,「生活の本拠を共にする交際をする相手」についてもこの法律の規定が準用されるようになっています。

 

保護命令で発令されるのは,申立人への接近禁止(同法10条1項1号),退去命令(住居からの2か月間の退去(同法10条1項2号)),電話等の禁止(同法10条2項),申立人の子への接近禁止(同法10条3項),申立人の親族等への接近禁止(同法10条4項)となっています。

 

加害者が保護命令に違反した場合,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられることとなっています(同法29条)。

 

違反すると刑事処罰が科せられる可能性がある命令ですから,DV被害を防止するための制度として相当に強力な制度といえます。

 

いわゆるDVという場合,身体に対する暴力だけでなく精神的暴力や性的暴力を含むとされますが,保護命令の対象になるDVは,原則として身体に対する暴力に限定されている点は注意が必要です。

 

また,実際に保護命令を発令してもらうためには,暴力があったことを示す具体的な証拠(診断書や写真など)が必要となる場合があります。そうした証拠がない場合で,加害者側が暴力の事実を否定してくると,証拠不十分として命令が出ない結果におわる可能性もあります。

 

ところで,保護命令の対象は,異性間の夫婦ないしパートナーに限られるのでしょうか。同性同士の間で生じたDV被害についても保護命令が出ることがあり得るのかという問題です。

 

これについては,平成19年(2007年)に女性同士のパートナーの事例に対して,実際に保護命令が出されたという報道がなされているようです(平成22年8月31日付日本経済新聞電子版)。

 

しかし,現実的にはあまり一般化していない様子で,東京地方裁判所では,これまで同性間での保護命令申立て自体がなされたことがないとのことです(「家庭の法と裁判」16号,平成30年10月15日発行,12頁)。

 

個人的には,DV被害が生じるのは異性間に限られず,同性間でもあり得るわけですから,保護命令の発令を認めない合理的理由は存在しないと思うところですが,少なくとも現行法の法解釈としては限界があって消極的に解釈せざるを得ないという見解もあるようで,はっきりと結論が出ているわけではないようです。

 

なお,同性間の話ではありませんが,異性間の場合でも,男性が(女性からの)DV被害を受けているとして保護命令の申立てをする事例は,ここ最近ずっと一定程度存在するようです(私自身も,男性からDV被害についての相談を受けたことが数回あります。)。

 

さて,DV被害は命にかかわる事例もありますので,被害に悩まれている方は,ぜひ警察・市町村などの相談機関,そして弁護士にご相談されることをお勧めします。

(弁護士 土佐一仁)